狸が見つけた温泉

狸が見つけた温泉

むかしむかし、まだ人々が湯河原の山々に入ることも
少なかった頃のこと。ある猟師が山中でケガをした狸を
見つけました。猟師はその狸をかわいそうに思い、家へ
連れ帰って手当てをしてやります。やがて狸は元気を
取り戻し、感謝の気持ちをこめて山へ帰っていきました。
それからしばらくの後、猟師が再び山を歩いていると、
どこからともなくあの狸が現れ、まるで「ついて来てほしい」
と言わんばかりに先を歩きはじめました。狸のあとを追って
いくと、岩の間から湯気が立ち上り、こんこんと湯が湧き
出ていました。不思議に思った猟師が手を入れると、
心地よい温かさ。その湯に手足を浸すと、山歩きで痛めた
足が軽くなるような気がしたといいます。猟師は村に戻り、
村人たちにこのことを話しました。人々が試してみると、
傷や痛みがたちまち癒えるようだと評判になり、次第に
多くの人がその湯を訪れるようになりました。こうして、
狸が教えてくれた湯――それが湯河原温泉のはじまりだと
伝えられています。

古豪に愛された湯

湯河原温泉自体が奈良時代にはすでに歌に詠まれる
ほど歴史が深く、地域の豪族・土肥氏らが湯治に
訪れた記録も残る名湯地です。 その中で、こごめの湯
と呼ばれた湯処・浴場が、この地域における温泉文化の
底流をなしていたと考えられます。

人を癒して千三百年

名称「こごめの湯」には、「湯河原の奥深くに湧く古湯」
「子を宿す・育てる湯処」といった意味合いが重ねられ、
現代の日帰り温泉施設としての当館名にもその歴史と
信仰の風格が息づいています。温泉に浸かるたび、
ただ身体がほぐれるだけでなく、1300年以上の
湯の記憶とともに、静かに深い時を感じてください。

「子込め」「子産め」という語感から
“子宝の湯”という意味合いも伝わり、
当温泉が安産・子育て・健康を願う湯
として言い伝えられてきました。